連鎖-4-
 孫策の声で料理を賭けて箸で格闘を開始しようとしていた凌統が、甘寧から視線をそらし小覇王を見る。
「隙ありぃー!」
 箸をまるで自分の武器のように巧みに扱い、一瞬の間に凌統の目の前の料理を自分の口へと運ぶ。
「え? あ! 甘寧ー!貴様ぁぁぁぁぁっ!!」
 二喬の話よりも彼らは目の前の料理の攻守が大事なようで、行儀悪くも卓子に片足を乗せ本格的に箸を使ての戦いが始まってしまった。
 陸遜は魏の王と小覇王の会話を杯を傾けながら傍観しているように見えるが、カンカンと箸が鳴る音や罵声するような声がどうにも気になるらしく、ゆっくりと戦闘を繰り広げている二人を見て口を開いた。
「お二人とも、静かに楽しむことができないのですか?」
 普段と変わらぬ笑みと変わらぬ口調が、二人の箸を止める。
 甘寧、凌統共に箸での戦闘は終わったが、当然のごとく燃焼し切れていないために、お互いに向かって文句は言い合っているようだが、その声は陸遜への恐怖のためか非常に小さいものだった。
「只ではくれぬ、と言うのならば、交換条件ではどうだ」
 曹操は二喬を諦め切れないようで、そのように孫策へと話を持ちかける。
「交換条件だされたって駄目なもんは駄目だ」
 首を大きく振って否定した。隣に座る孫堅は苦笑している。
「ふむ……夏侯惇よ。何か案はないか」
 杯を傾け酒を飲んでいた夏侯惇は曹操に尋ねられるが頭を振って、諦めると言う手しかしらん、と呟いた。
 二喬は自分たちの身が狙われていることなど知らずに、装飾された大きな扇をまるで体の一部のように扱い舞を踊り続けている。
「何を言われたって譲る気はないからな!」
 絶対に譲らないと曹操を睨み付けた。
「曹操殿。策を虐めるのはその辺にしてやってはくれまいか」
 さ、飲んでくれ、と先ほどまで苦笑していた孫堅が見かねて和やかに息子の手助けへと入る。
 静かに曹操と孫策の話を聞いていた陸遜は、ニ喬の運命の行方を気にする、と言うよりもどこまで話が面白くなるかを楽しみにしていたようで、話がとりあえず終結したことに軽く舌打ちをした。

更新履歴2006年1月30日 担当:計都
戻る 進む