連鎖-2-
 孫策は若者でありながらも堂々とした態度で小覇王と呼ばれているのも頷ける風格だった。
 敵である魏の王と猛将と名高い夏侯惇と張遼、たった二人の護衛だけで呉の国へ赴いたことに敬意を示し、自ら三人を孫呉の王であり、孫策の実父である孫堅の元へと案内した。
 回廊からは魏の国とは違う美しさの庭園が見えていた。その景色はまるで呉の国の性格、引いては孫堅という人物を表しているようにも見える。
 城の作りも何もかもが違う。自分の国とは違う呉。
「この先に親父がいるぜ」
 孫策が足を止めたのは美しく紋様を彫られているが圧迫感を感じる大きな扉の前だ。
 ギィ……、と扉を開いた瞬間、三人の目に見えたのは、王座の風格ある孫堅と、王座から扉までにずらりと並ぶ呉の将たちだった。
 息子である孫策が先頭を切って歩いていき、その後ろを曹操らが付いていく。
 ずらりと並んだ呉の武将たちは魏の王と猛将二人を手を組み迎えている。
(なぁなぁ、魏の曹操って意外に背が低いな)
 ぼそりとごくごく小さな声で呉の武将甘寧が隣にいる凌統に呟いた。
 呟かれた凌統は半目にして五月蝿いと視線で話すが、甘寧は、なぁって、と肘で軽く凌統を突付いている。
(確かに思ってたよりも低い。威圧感はあるけどね。っつーか五月蝿いよ、アンタ。そーゆーのは後にしてくれる?)
 コソコソと曹操たちには聞こえないような声で話していたら、二人に突き刺さる視線。
 甘寧と凌統が痛い視線を辿ってみると向かいの列にいる陸遜が睨んでいた。
(甘寧の所為だからな)
(俺の所為じゃないだろ、お前が答えるから悪い)
(人の所為にするなっつーの!)
 人の所為にされた凌統が小声ながらも力を込めて否定した時、思わず身を震わせてしまいそうな視線が矢のように刺さる。
 視線の先を見てみれば、先ほどと同じく陸遜が二人を見ているのだが、その目は僅かに細められていて、一見笑っているようにも見えるのだが、瞳からくる威圧感は視線だけで殺されてしまいそうなものだった。
(……)
 二人とも無言になると後に来るであろう恐怖を想像する他なかった。
 その間に、王座から立ち上がり和やかな表情で孫堅は曹操と向かい合っていた。

更新履歴2005年11月27日 担当:計都
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