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   聞こえる声
 それはとても心地よいもので私を安心させる。
 戦場にいてもどこにいても聞こえる声。
 声を聞くと強くなれる  




 自分の未熟さから酷く落ち込んでいた私は一人になりたくて外へ出た。
 誰もいない場所へ。
 そう思って獣道を歩み辿り着いたのは、大きな木と人一人余裕で寝転べるような大きな岩がある場所。
 ここなら誰もこないだろうと思って、思い切り落ち込んだ。
 自分を責めて責めて、地面に拳を打ち付けて己の未熟さを責めた。
 余りに悔しくて涙まで溢れそうだった。
 けれど泣けば己に負けると思って、唇をきつく噛んで耐える。
 今日の悔しさは必ず自分の為になる、そう思って耐えて、考える。
 何が駄目だったのか、何が悪いのか、何が足りないのか。
 人は考える事が出来る。
 だから、色々な方向から考えた。
 もっと有効な作戦があるのはないのかと犠牲を最小限にして尊敬する諸葛亮先生に勝つことは出来ないのか、と。
 けれど、幾ら考えても方法が一つしか思い浮かばない。
 しかしこれでは兵たちに多くの犠牲が出てしまうだろう。
 犠牲は出したくない。けれど、勝つにはこれしかない。
「……もっと考えなければ……」
 冷静になって考えれば必ず道は開ける。
 そう信じることが大事であり、信じることは自分を強くすることだと陸遜は知っていた。
 目を閉じて風を感じ、鳥の声を聞き、緊張を解して頭を冷やす。
 暫くそうして考えていると背後に気配  鈴の音。
「俺が全部ぶっ潰してやる」
 背中から聞こえる力強い声。
 誰も来ないと思っていた場所に人が来て驚き目を見開く。
「甘寧殿!?」
 慌てて振り向いて甘寧の顔を見ると、自信たっぷりの笑み。
「大丈夫だ。俺は信じてるぜ」
 どこから出てくるのかわからないこの自信が羨ましい。
「……そうですね」
 にこりと笑ったら、甘寧も笑い返してきた。
 そして身体ごと引寄せられて、唇が触れ合う。
 触れるだけではなく、唇を割って舌が口腔に滑り込んできて悪戯にあちこちに触れて行き、舌を絡め取られた。
「……んっ……ぅ……」
 ぬるりと互いの濡れた舌が擦りあわされて身体がぶるりと震えて、それを止めるために逞しい腕にしがみ付いて、熱い吐息を重ねる。
 足から力が抜けそうになる頃、ちゅっと音を立てて唇が離れて行く。
 酸欠になりそうだった体に少し荒い息で空気を取り入れた。
「お前が良い作戦が考えてくれるから、俺は思い切り暴れることが出来る。忘れるなよ」
 トンっと胸を拳で押される。
 正直言うと少し驚いた。
 ここまで信用してくれていたことが。
 だから偽り無い素直な笑顔が無意識に出る。
「ありがとうございます」
 甘寧はおう、と頷き、邪魔しちゃ悪いから、と去って行った。
 遠くなる背中を見つめながら深く思う。
 信じてくれてる人がいるから、人は強くなれるのだ   
 目を閉じて、意識を研ぎ澄まし、周りの風の音や、風で揺れるごとに葉が擦りあわされて出る音、小鳥の声、虫の声、遠くから聞こえる人のざわめき、自らの力で聞き取れる限りの音を拾った。
 普段気付かないけれど、音は無限に溢れていて、それら一つ一つがなくてはならないのだろう、と思う。
 ふとした瞬間に聞こえた鳥の鳴き声や、虫の声にふっと気持ちが軽くなることも多々ある。
 甘寧が自分にくれた言葉もそうだった   いや、言葉だけではなく声の力。
 迷いの無い声。
 それは、とても信頼してくれていることを教えてくれていて、同時にその強さに引き込まれそうになる。
 引きずりこまれて良い強さは、人へと感染し、それは勇気となり力となる。
 目を開いて、顔を上げて晴天の空を見た。
「……諦めてはいけない。知謀を尽くさなければ」


      ”信じてるぜ”


 この力強い声を胸に   

 それは人の力となり、呉国を勝利へと導く力となる。
 もてる知を使い、策略を限界まで練る。
 孫呉の為に、貴方の為に   

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「25のお題01.声」2005.10.25up
デキてる甘×陸。少しずつエロを増やしていこうと考え中。