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意思



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   俺と話していた甘寧が不意に陸遜と視線を合わせた。
「よぉ! 陸遜」
 親しみある笑顔を見せて甘寧が陸遜を自分の胸へと引き寄せた。
「……心配させて悪かった」
 近くにいる俺のもわかる酷くやさしい声。
「甘、ねい…どの…」
 小さく聞こえた声で泣き出しそうになっているのがわかった。
 そりゃそうだ。痛々しいくらいに心配してたんだから安心したら気も抜けるだろう。
 だが   無性に苛立った。
「甘寧。何泣かせてんの」
 だからちょっかいをかける。
 二人の世界なんか作らせてやらないように、甘寧が俺を忘れないように  




 あの戦場から無事生還した甘寧は怪我により暫く寝台の上で休息を余儀なくされてた。
 数日前から凌統は呂蒙から用事を頼まれては地方へ馬を飛ばしたり、領地内で書類を運ばされたりと走り回っていたが、ようやく暇を見つけて甘寧の見舞いに行くことが出来るようになった。
 病気で床に押し付けられている訳ではないので、酒瓶を片手に持ち部屋へと向かう。
 次の角を曲がれば甘寧の部屋がある。
 暫くぶりに顔をみれるとなると、悔しいながらも凌統は嬉しくなり足取りも軽くなる。
「甘寧」
 すでに開け放たれていた扉から室内を声をかけ覗くと、寝台の傍に椅子を置き、座っている陸遜と上半身を寝台から起こしている甘寧が楽しそうに笑っていた。
 一瞬苛立ちを覚え、自然を眉を寄せていた。
「よっ、凌統じゃねぇか」
「凌統殿」
 甘寧は片手をあげ、陸遜は小さい笑みと頭を軽く下げて会釈をした。
「……可愛い子が傍にいて、あんたは元気そうだね」
 笑みを浮かべながら皮肉を言う   甘寧にではなく陸遜に向けて。
 それに気づいた頭の良い陸遜は表情に影を落とす。
「寝っぱなしってのは性にあわねぇんだがなぁ……こいつがどうしてもっていうから仕方なく大人しくしてやってるんだ」
「……へぇ。 甘寧はほんっと陸遜に弱いねぇ」
 苛立つ。
「そんなことないですよ。 私よりも凌統殿が言うことを守られてるみたいです」
 まるで甘寧を助けるような言葉だが、凌統を持ち上げるようにも聞こえ、陸遜が自身を助けるために言っているようにも取れた。
 そんな頭の良いところさえ、今日は何故だか苛立ちの対象になる。
 この場にいたら頭に血が上り、とんでもない事を口走ってしまうかもしれないような危険を感じる。
 そう思って部屋を後にしようと考えた時だった。
「お、なんだよ。 酒持ってきてくれたのか。 気が利くじゃねえか」
「……流石にそーゆーことだけは目ざといねぇ……」
 ため息交じりで返して、酒瓶を甘寧に向けて投げた。
「じゃ、俺は忙しいから」
 甘寧に酒が渡ったことを確認してから踵を返した。
「おい、一緒に呑まねえのか」
 背後から聞こえてくる声に手をひらひらと振って意思表示し、部屋から出て行った。



「……おもしろくない……」
 美しく整えられた庭園を見ながらぼそりと呟いく。
 そんなことを言葉に出してしまう自分が子供っぽいと自嘲した。
「馬鹿みたいだ」
 ただ、甘寧と陸遜が一緒にいただけで、何もなかった。話をしていただけだった。
 それなのに苛立ちを感じてしまっている。
 間違いなくとも嫉妬なのだろう感情。
 そんなに好きなのか、と自分でも嫌になる。
 二人が一緒にいるのを見たくないなら、なんでも理由をつけて追い出せばいいと思うが、決して陸遜が嫌いな訳ではないから、あっさりとは出来ない。
 だからと言って、二人が仲良く話しているのを黙ってみているのは気に食わない。
 繰り返し繰り返し、同じことばかりぐるぐると考える。
「馬鹿みてぇー……」
 前髪をくしゃりと指で掴みながら苦笑した。
「こりゃ色んな意味で前途多難だな……」
 気持ちを落ち着かせるために、暫く甘寧には会わない事に決めた。
 考える時間も必要だ。
 落ち着いたら、馬鹿なことをしに行こう。


    少しだけ楽しみにしていることがある。
 今日も久しぶりに顔をみせて、また見せなくなって、次に会った時どのような反応をするのかを。
 久しぶりに会った時の事を想像しながら、刻を待つ   



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「意思」2006.07.09up
久しぶりに文章書いたら意味わからなくなった……。書きたいことは書いたけど上手く文章になってるかどうか……。