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悪戯



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K
 
   知ってる。
 お前の目は俺を見ちゃいない。
 いつも見てる先は   



 回廊を歩いていると嫌でも目に入る風景。
 リン、と動くするたびに澄んだ音がする。
 呉の武将で、親の仇   甘寧。
 その隣に歩いてるのは男にしては小さくて華奢で、男から見ても可愛いと思える時があるほどの容姿をして、とても賢い陸遜。
 二人仲良く何かを話している。それを俺は遠くから見てる   なんでもないような表情で。
 甘寧と陸遜はよく一緒にいるように思う。
 女々しい   自分で最近よくそんな言葉が過ぎる。
 だからか、そんな自分を認めたくなくて……。



「よう、お二人さん。何、話してるんだ?」
 後ろから二人に話しかけた。
「これは凌統殿。」
「お、凌統じゃねえか」
 二人揃って振り返り、笑顔で挨拶を交わす。
 こちらも笑顔で返しておいて、二人の間に身体を割り込ませた。
 何を話してたのかと聞くと、甘寧から世間話、だとの返事。
 ちらりと陸遜を見ると、はにかむように笑っている。


    気になる。


 妙に気になる笑い方。
「どうしました?」
 気持ちが顔に出ていたからだろうか、不思議そうな顔をして陸遜が尋ねてきた。
 少しだけ意地悪をしたくなる。
「可愛い顔してたから、甘寧とあまーい話でもしてたのかなー、なんてね」
 そういってにやりと笑ってみせると、陸遜は表情を凍らせた。
「……あ?」
 不思議だった、何故そこで顔が固くなるのか。
「お前、何言ってんだ。陸遜、固まっちまったじゃねえか」
 甘寧にため息を吐き出されながら言われると無性に腹が立った。
「五月蠅いよ、あんた。そんなの俺が聞きたいね」
 五月蠅いって何だ!と怒る声が聞こえるが、とりあえずは無視をして、陸遜を再び見ると、今度は何事もなかったかのような笑み。
「では、私はこれで」
 唐突の逃げ。
 去っていく背中を俺と甘寧、二人して見送のかと思ったら。
「おい、陸遜!」
 俺の横をすっと通り抜けていく。
   あ)
 あっという間に陸遜に追いつく甘寧と残された、俺。
 明らかな優先順位。
 わかってたけど、目の前で見せ付けられるのは苦しい。
 俺の事を全く振り返らないまま、どんどん遠くなる甘寧の背中。


 残されるのは、辛い。
 何故、こんな気持ちを味わう羽目になったんだ。
 何故、何故   何故。
 心は頭に従ってくれないんだ。
 苦しくなるほどに愛しい想い   


 一人、部屋に戻って寝台に座り、深いため息を吐き出した。
 苛々する。
 何をやっているんだと自己嫌悪に陥りそうだ。
(……はぁ)
 ため息。
 こんな自分が嫌だと思うと余計に気持ちが滅入り、苛立ちが募る。
 再びため息を吐き出しそうになった時。
 ドン、ドンッ。
 乱暴に叩かれる扉。
 いつも、こんな力任せに遠慮なく扉を叩く人物は一人しかいない。
 今、一番会いたくない、甘寧。
「凌統!いるんだろ!」
 ドンドンドン、と扉が壊れるんじゃないと思うくらいに叩かれる。
 このまま放っておいてもいいか、とも思ったけど、余りの五月蠅さに文句の一つも言いたい。
「あんたなぁ、もっと静かに叩けないのかよ」
 そう言いながら開けてやる。
「お、やっぱいたんじゃねえか。よし、付き合え!」
 嬉しそうな顔でずいっと俺の顔の目の前に突き出したのは酒瓶。
「昼から酒かよ」
「いいじゃねえか、酒はいつ呑んでも旨いんだぜ」
 そりゃ、あんただけだ、心の中で突っ込んで部屋に入れてやった。
 呑めば少しでも苛立ちが薄れるかもしれないから。


 苛立ちからいつもよりも早いペースで呑んでいたようで、どうやら何時の間にか潰れて寝てしまっていたらしい。
 ふと、目覚めると目の前に甘寧の顔。
「ぅわ!!」
 驚いて跳ね起きると、自分の寝台の上で、すぐ隣に甘寧が眠っていた。
 ぐっすりと眠っている。
 試しに少しだけ指で頬に触れてみても起きる気配はなかった。
 どうして、この男に心奪われたのか、未だに自分が分からない。
 悔しいから、あんたが眠ってる間に悪戯をしてやる。


 起きないことを祈りながら、そっと唇を重ねた   

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「悪戯」2005.11.9up
はじめてーのちゅうー君とちゅうー。 甘陸SSとリンクしてるようでしてない方向で進みます。