K

何時からか。



index
_____________________________________

 
G
K
 
      憎んでいたはずなのに。


 父を討たれた悲しみ、悔しさ、苦しみ、寂しさ、肉親を失くすという、心のどこかがもげてしまいそうな思い。
 戦場にいたからか、虚よりも肉親を討った敵を討つことばかり考えて頭に血が昇った。
 殺意を胸に討った敵   甘寧に武器を向けた。
 戦い方なんて忘れてしまっていたかもしれない。
 戦術なんて何もなかった。ただ、ひたすらに討つことだけを考えていた。
 けれど、結果は   
 敵であった甘寧は呉軍に入った。
 作戦の要になり、見事それを成し遂げ呉を勝利へと導いた。
 憎らしい。
 仇。
 こちらが恨み辛みを持っているのに、甘寧は何もなかったかのように味方になれば、昨日の敵は今日の友、とかふざけたことを言っている。
 そんな簡単に肉親を討たれた恨みは消えない。


 だから、戦場だろうがどこだろうが、暇があれば、目に付けば、突っかかっていった。
 言葉よりも拳を交わして、時には武器を捨てただの殴り合いなんてこともしてた。
 だからなのか   

「甘寧!」
 今日も目に付いた。
 実は陸遜に絡んでいるのを見ていた。
 その後に声をかけてやった。
 陸遜がすぐに去って行ってしまったからか、少しだけ寂しそうにしていたようにみえたから。
 どうやらこの男は陸遜にちょっかいを出すのが趣味らしい。
 気が付けばしょっちゅう絡んでいるようだ。
 その度笑顔で交わされたり、時には完全に無視されたりと、余り相手にされていないようだが、不憫などとは思わない。自業自得だ。
「おおっ、なんだ勝負か!?何時でもかかって来やがれ!」
「……ったく。一々うるさいよ、お前」
 声をかけた途端、目の色変えて走って庭の俺がいるところまで来て、大声で喋った。
 もうちょっと押さえられないのかい?なんて言うのは野暮だろう。どうせ直せやしない。
 得意の双節棍を構えて口元だけで笑う。
 すぐに甘寧も戦闘態勢に入り、互いの隙を探る。
 こうやって戦ってる時だけは俺を見てる   なんて考えてたら楽しくなってきた。
 本気ではないとは言え、こうやっているのが楽しい。
 甘寧の馬鹿なところはそれなりに気に入ってるんだ。
 小さいことではない、大きな悩みでも前向きに変えてくれるような、馬鹿さが。
「もし……もしもだけどさ。呉にいた誰かが寝返ってお前を殺しにきたらどうする?」
 馬鹿ついでに聞いてみた。
「仲間だとか、そんなことは関係ねえ!敵に回ったなら、ぶった切るだけだ!」
「……単純な作りで」
 本当に単純明快な答えて、呆れた笑いがこみ上げてきた。。
 こんな男だから、隣にいると楽になったり、自分の器の小ささに苛々したりするんだろう。
 正直に気に入ってるなんて言ってやらない。
 でも、こっちを向くまで挑み続けてやる。



    何時からか、懐に入ってきてた。

_____________________________________

「何時からか」2005.10.06up
キャラ掴み。凌統編。陸遜も凌統ある意味ツンデレ。ツンデレ最高。